「お部屋を丸ごと予防空間」をコンセプトに、2022年に誕生した「MAMOROOM(以下、マモルーム)」。虫ケア用品の国内シェア率No.1*を獲得し、多くのお客様にご愛用いただいている中で、コンセプトとターゲットも今までの「虫ケア用品」とは全く異なる製品を開発するに至った背景や、お客様に製品をお届けするまでのストーリーをご紹介します。
*虫ケア用品:インテージSRI+ 殺虫剤市場(園芸用殺虫剤除く)2021年累計販売金額シェア
マーケティング部門
研究開発部門
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アース製薬が「殺虫剤」を「虫ケア用品」という呼称に変えたのは、2017年のこと。「殺虫剤=人体に有害」といったマイナスイメージを払拭するとともに、「虫を殺す」ことが目的ではなく、「虫媒介による感染症から、人々を守る」ことが目的であるというアース製薬の想いを表すためです。
虫ケア用品には、「虫を見つけたから、駆除する」アイテムと、「虫が出ないように予防する」ためのアイテムがありますが、予防を目的としたものは、まさに「虫ケア(虫から人を守る)」の概念を体現しているアイテムだと思います。
プロジェクトは2019年に製品開発をスタートしましたが、翌年にはコロナ禍となって人々の生活スタイルは大きく変化。在宅時間が長くなったことで、家の中で蚊やダニといった虫が気になる人が増え、2020〜2021年にかけて室内用の虫ケア用品の市場が大きく拡大しました。
また、最近の若年層は虫を見る機会が減っていることもあり、虫が苦手で、そもそも家の中に虫が出ないようにしたいという方も多いです。そのため、予防目的のアイテムは若年層による購入の割合が多い傾向にあります。
こうした世の中の変化をふまえ、若年層をターゲットに、室内で予防できるアイテムの製品開発を進めました。
対象害虫を「蚊」と「ダニ」に設定し、「蚊用」と「ダニ用」2つの製品開発に着手しました。マモルームは、当社の「アースノーマット」の薬剤揮散システム技術を応用しており、薬剤を入れたボトルをセットしてスイッチを入れると有効成分が拡散します。熱を使っているので非常に高い拡散力で部屋の隅々まで薬剤が届き、蚊やダニの被害を予防できます。薬剤は1本で1440時間(約60日)使用できます。その間ずっと安定して薬剤が出続けるので、スイッチを入れてしまえば置いておくだけで手間も要りません。
このシステムでは、蚊については“部屋に侵入させない”という効果があることがすでにわかっていましたが、ダニにどのような影響をおよぼすのかという点については、開発当初は未知数でした。
そこで、有効成分がダニに対してどのような効果があるのか、試験を開始しました。どんな試験も、すぐに期待する結果が出ることは珍しく、手応えのある結果が得られるのは1ヶ月に1度あるかないかという程度。ダニの試験と経過の観察は、本当に長丁場で根気のいる作業でしたが、おおよそ2年間粘り強く実験を続けた結果、 “ダニアレルゲン物質の抑制や、ダニを無力化して掃除機で吸い取りやすくして増殖を防ぐ”といった効果があることがわかりました。
虫ケア用品というと、「すぐ効く」「強力」といった効果感が伝わりやすいように派手なデザインにしたり、どんな年代の方でも使い方がわかりやすいようにスイッチを目立たせるデザインにしたものが多いです。しかし、マモルームは「空間を心地よくするというベネフィットを提供する」ことを目指し、ターゲットである20〜30代に合わせて、外装のデザインや仕様にもかなりこだわっています。
ターゲットに合わせたデザインや使い勝手を考えるにあたっては、小さいお子さんがいる社員やそのご家族に「どんな機能があったら嬉しい?」と聞くなど、社内外でも多くの方に協力していただきました。このような調査を何度も重ね、第三者の意見をしっかり反映させていきました。
実際に完成したデザインは、丸みを帯びた優しいフォルムで、色はナチュラルな白。お部屋に置いても目立ちすぎることなく、空間に自然になじみます。器具自体も薬剤の入ったボトルが外から見えないようにしたり、インテリア小物のような雰囲気を大切にしました。プラグは壁面に沿って曲がるようにして、できるだけコードが空間を邪魔しないようスッキリさせています。また、小さいお子様がいたずらしても簡単には薬剤カバーのロックを外せない仕組みにし、安心安全に使えるように配慮しています。効果感だけでなく、デザイン面においても細かな点にまでこだわり尽くした自信作です。
マモルームという名前の由来は、「まもる」と「ルーム」の造語です。造語でも可能な限り簡便な単語の組み合わせで、使う方々が得られる価値を想像しやすい名称を心掛けて設定し、20〜30代の若年層をターゲットにしたブランドとして、2022年2月に発売しました。
今までの虫ケア用品のように効果感を全面にアピールするのではなく、「虫が出ないように予防することで、空間を心地よくする」といったベネフィットを伝えたいと考えていました。それは、「マモルームのある暮らし」は、マモルームが空気清浄機のような存在として自然に生活に根付き、お部屋が心地よさで満たされているようなイメージが近いです。発売時のプロモーションでは、そういったブランドイメージが伝わるようなWEB動画を制作して広告を展開しました。動画では、丸みを帯びた優しいフォルムを、もふもふした愛らしいウサギに模して登場させたり、マモルームの歌を流して耳にも残るようにするなど、まずは、マモルームに興味をもってもらえるような内容にしました。
また、同時に行ったモニターキャンペーンでは、募集に対して20倍超の応募という大きな反響がありました。マモルームのブランドコンセプトに多くの方が共感いただけた結果だと、確かな手応えを感じました。
こういったコミュニケーションを続けていくことで、少しずつブランドイメージが醸成されていくと考えています。今後3年、5年と経った時にマモルームがブランドとしての厚みをどんなふうに増していくのかが楽しみです。
おうちのどこでもなじむデザインに
マモルームを最初に見た時は、「アースノーマット」と似ているな、という印象を受けましたが、ブランドマネージャーから製品特長の説明を聞くと、同じ技術を使っていても、コンセプトが全く違うものだとわかりました。
また、最近は室内の置き型タイプの「虫ケア用品」の若年層の使用が減っているということがデータからもわかっており、カテゴリ自体の若返りを図らなければいけないという課題があります。マモルームはまさに、若年層をターゲットにしたアイテムです。既存の競合製品と戦うのではなく、新たなターゲットを獲得して市場拡大を狙えるアイテムだと感じ、そういったメリットをお取引先にもしっかり伝えていきたいと思いました。
商談が始まったタイミングでは、企業のバイヤーや店舗スタッフの方々からは「アースノーマットと何が違うのかわからない」「同じような製品ではカニバリを起こすのでは?」といったお声をいただくこともあり、マモルームの特長をすぐに理解してもらえず苦労しました。
何度も足を運んでは、「マモルームは、これまでのように“虫を駆除するため”に使う製品ではなく、“虫を見ないようにするために予防する”製品。お客様の多様なニーズにお応えするには、マモルームのように新しい価値を提案できるものが必要です!」ということを粘り強くお伝えしました。また、店頭ではマモルームを目立たせようと販促物を大々的に展開した売り場づくりをしたり、レジャー用品や掃除用品の売り場でも関連製品として置かせてもらったりと、一人でも多くの方にマモルームに興味をもってもらえるように努めました。
こうした地道な努力が本格的な夏の虫ケアシーズンに入って実を結び始め、売数が伸びていきました。ドラッグストアやホームセンターなどの店舗では、ターゲットとしていた若年層を中心とした新しいお客様を取り込むことができ、既存の虫ケア製品の売上を維持しながらマモルームで新規の売上を作ることができました。また、マモルームの販売を通してバイヤーや店舗の方々から「アース製薬は新製品に勢いがある」と評価をいただき、他の製品についても相乗効果が出ています。マモルームは、当社全体の売上アップに貢献している製品です。さらに多くのお客様にご愛用いただけるように今後も拡販に努め、心地のいい暮らしをご提案していきたいと思います。