PROJECT STORY

アースガーデン
ロハピ

ガーデニング市場の拡大を目的に、これまでの農薬とは全く違ったイメージ戦略で2020年に発売された「アースガーデン ロハピ」。安心な食品原料由来で効果もしっかり感じられる農薬を目指した結果、製品開発にかかった期間はなんと10年。
お客様の「おいしい野菜が食べたい」「花をきれいに咲かせたい」思いに寄り添い、ロハピをお届けするまでのストーリーを紹介します。

マーケティング部門

研究開発部門

 営業部門 

EPISODE /01

園芸の未来をつなぐ、
新たな顧客の開拓

マーケティング部門

アース製薬がガーデニング市場に参入したのは2003年。虫ケア用品、日用品に続く第三の柱を作ろうと立ち上げた事業で、会社にとって大きな挑戦でした。

毎年、家庭園芸を始める方は一定数いるのですが、うまく育てることができなくて翌年には離脱してしまう人も多いです。その原因の一つは、園芸をされる方のお悩みとしてよく挙げられる、野菜や花の病害虫対策にあります。対処法としてよく用いられるのは農薬ですが、「使用方法がわかりづらい」、「農薬はプロが使うもの」、「効果が高いということは、人体にも影響するのではないか」といったネガティブなイメージから、初心者から敬遠されることも珍しくありません。

園芸は、自分で育てた野菜の美味しさや、植物がきれいな花を咲かせるといった感動を味わえるのが醍醐味です。手間暇かけて育てるのも楽しいですが、なるべく手間をかけずに育てたい方も多くいらっしゃいます。また、園芸を続けてくれる人が増えるということは、新規ユーザーが増えて市場の活性化にもつながりますし、何よりも一度の失敗によって園芸をやめてしまうのはもったいないと思っています。

それと、ちょっとした豆知識としてお伝えしますが、農薬はできれば使いたくない、虫がつく方が美味しいという方がいますが、虫がつくと野菜の自己防衛でえぐみが出たりしますし、弱い野菜の方が虫はつきやすく、美味しくないことがわかっています。よって、農薬は必要に応じて使った方が良いと考えています。

家庭園芸に使用する農薬の市場は拡大基調が継続しており、食品原料などを有効成分とし安心を訴求した薬剤が他メーカーを中心に市販されていました。しかし、お客様がそれらを求める調査データがあるにも関わらず、2009年には市場の成長が頭打ちになっていました。お客様から安心な反面、効果を感じにくいという声も聞かれ、期待に応えられずリピートが獲得できていないと分析しました。この状況を打開すべく「誰でも簡単に、安心して使える農薬をお届けしたい。そのために、食品原料でも従来品とは一線を画す効力をもった農薬を作りたい」と製品開発に着手しました。

EPISODE /02

安心かつ効果の高い、これまでになかった農薬を

研究開発部門

開発にあたっては「お客様が安心して使えるだけでなく、満足いただける効果を実現すること」が必須条件となりました。

農薬は人が口にする食べ物に使用されるものなので、効力や安全性、残留性などあらゆる点で審査が厳しく、開発には時間も費用も人手もかかります。しかもアース製薬が農薬を自社開発するのはこれが初めて。非常にハードルの高い挑戦がスタートしました。

第一の壁は、新しい有効成分を探し出すこと。食品原料とひと口にいっても、種類は数え切れないほどあります。また、「作物を汚さないか」「使ったときににおいが気にならないか」といった点にも考慮が必要です。ある程度の可能性が見込める原料を絞り込んだら、ひたすら実験。「これだ」という原料が見つかるまでには2年を要しましたが、たどり着いた原料は今までの食品原料の農薬にはなかったアオムシへの効果が確認できたり、他とは明らかに異なる反応を示し、大きな可能性を感じさせるものでした。

EPISODE /03

1,000回を超える分析作業に、行政上の登録…
製品化への長い道のり

研究開発部門

第二の壁は、有効成分を水に溶かし込む「製剤化」という工程です。スプレー製品として仕上げるための工程ですが、農薬の場合は、単に病害虫に効果を発揮するだけでなく、植物への影響も考慮する必要があり、成分全体のバランスを取るのが非常に難しいです。試行錯誤を繰り返しながら、2年ほどかけてようやく完成段階にこぎつけました。しかし、製品化するためには、暑さ寒さといったさまざまな環境下でも長期間安定した状態を保てなくてはいけません。2年が経過した時点でも安定性をクリアすることができず、問題の原因を探すために要素を分解し、仮説を立てては実験を繰り返す期間が続きました。

ここまでで4年以上が経過し、社内では「有効成分を探すところからやり直した方がいいのでは」という意見が出たこともありました。それでも開発担当は「今の研究に必ず答えはある」との信念で地道に前進を続けました。チームメンバーの協力のもと、行った分析回数は1,000回以上。その中で、求める状態を実現できたのはたったの一処方。お客様に安心して使っていただきつつ、優れた効果も実感していただける、これまでにない農薬が生まれた瞬間でした。

これでようやく製品化…と言いたいところですが、最後の壁は行政上の登録です。厚労省、農水省、環境省と多岐にわたる省庁の審査を通過しなくてはいけません。特に有効成分の農薬登録は大変で、5,000枚を超える書類を提出し、登録が完了したのは申請から6年後の2019年のことでした。

EPISODE /04

いよいよ市場へ! SNS世代も意識したマーケティング戦略

マーケティング部門

マーケティング戦略で重視したのは、ライバルとなる製品との差別化です。製品名は「ロハス」×「ハッピー」で、環境へのやさしさと、「植物がうまく育って家族が喜んだよ」といったお客様のベネフィットを表現して「ロハピ」にしました。お客様の根本的な願いは「虫を駆除したい」ではなく、「おいしい野菜が食べたい」「花をきれいに咲かせたい」ということ。製品は、その願いをサポートする存在だという思いを込めています。また、「短くて覚えやすい」「ツイートしやすい」といった、SNS戦略も意識しています。

そして、パッケージもかなりこだわっています。従来の農薬のパッケージは、小さな文字がびっしり書いてあって見づらいものや、固そうなイメージのものが多いです。ロハピは、ネーミングを体現するような明るいカラーを採用し、裏面は病害虫の写真やイラストを用いてわかりやすくするといった工夫をしました。

パッケージの裏面は、病害虫の写真やイラストを採用 【適用病害虫の例】 虫:アオムシ、アブラムシ類、コナジラミ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ。 病気:うどんこ病、黒星病。 厄介な虫と病気にすばやく効く。 【効果的な散布方法】 虫:虫体にたっぷり散布してください。 病気:葉の裏表にたっぷり散布してください。 虫は葉裏にも隠れているため、葉の裏表にたっぷり散布してください。 パッケージの裏面は、病害虫の写真やイラストを採用 【適用病害虫の例】 虫:アオムシ、アブラムシ類、コナジラミ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ。 病気:うどんこ病、黒星病。 厄介な虫と病気にすばやく効く。 【効果的な散布方法】 虫:虫体にたっぷり散布してください。 病気:葉の裏表にたっぷり散布してください。 虫は葉裏にも隠れているため、葉の裏表にたっぷり散布してください。

バイヤー向けには「いかに効力が優れているか」が伝わる資料を作成しました。生産や配送時のコストも踏まえた細かな価格設計も徹底。これもマーケティングの大切な仕事です。店舗では売り場の獲得が非常に重要なので、ひな壇型の目立つ陳列什器を用意して、営業が活用できるようにしました。

さまざまな思いを込めて完成した「ロハピ」は、従来の農薬のイメージを覆すものになりましたが、全てにおいてこだわり抜いたといえる製品。「新たな層の獲得にはこれが必要だ」という自信を持つことができました。

EPISODE /05

お客様からのうれしい反応、寄り添う姿勢はこれからも

営業部門

営業部門も、ロハピには並々ならぬ熱意を抱いていました。発売前に行われた開発担当のプレゼンテーションで、製品誕生に至る10年の道のりを知り、営業全体に「これで熱くならない者はいない」という空気が生まれていたからです。

しかし、バイヤーの最初の反応は厳しいものでした。「このパッケージでは農薬だとわからない」「効果が高い化学系の方がいい」といった声もありましたが、商談を重ね「園芸市場を広げていくために必要な製品です」と説得を続けました。ようやく採用となって喜んだのもつかの間、ライバル会社の巻き返しにあったことも…。それでも諦めるわけにはいきません。店舗を回り、「安心で、なおかつ効果が高い」という製品の良さを何度も説明したり、園芸担当責任者以外のスタッフ・パートの方々にも製品の魅力を伝えたりと、粘り強い営業活動を展開しました。

こうして、売り場に並べられた「ロハピ」は、予想以上の注目を集めました。店頭でお客様に製品の印象を伺うと「見た目から明るくて、安心感があっていいよね」と非常に好反応。コロナ禍で園芸をはじめる方が多かったことも強力な追い風となり、売れ行きは順調に伸び、バイヤーからは「ロハピのおかげで園芸コーナーが盛り上がって、業績も伸びたよ」との言葉をいただきました。

マーケティング部門

SNSでも「買ってよかった」「ありがとうロハピ」といったコメントを数多くいただき、園芸を楽しむ皆様のお役に立てたことをうれしく思っています。ガーデン事業全体も大きく成長し、2022年現在の売上は10年前の10倍にまで増加しました。今後はニーズの高い観葉植物にも力を入れていきたいと計画中。しかし、根本にある「植物の栽培に寄り添う」という姿勢は変わりません。これからもお客様とのコミュニケーションを大事にしながら、ガーデニング市場を盛り上げていきます。

  • ※本記事は、2022年9月に取材した内容です。

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