アース製薬の海外営業活動は、大きく分けて2つあります。一つはタイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、中国のように、現地法人を置くパターン。もう一つは、日本から製品を輸出し、各国の代理店を通じて製品を流通させるパターンです。国によっては、代理店内に駐在事務所を置いて活動することもあります。私は2021年、海外営業部門への配属直後、ミャンマーの駐在事務所に約1年赴任しました。
もともと日用品メーカーの営業職志望で、アース製薬には2015年に入社しました。最初は国内営業で東北や北海道に約7年間赴任し、みっちり現場経験を積みました。この経験を活かし、海外でアース製薬を広める挑戦をしたいと自ら願い出て、海外営業部門への異動が叶いました。私はこう見えて、ドイツ生まれ(笑)。海外生まれというだけで、生活経験もなければ語学もダメですが、なぜか昔から「海外で暮らしたい」という気持ちが心の隅にありました。それも、異動を志願した理由の一つだったかもしれません。
海外で製品を販売するには、国内製品以上に調整が必要で、関連部署との連携がものすごく重要です。「この製品を輸出したい」と思っても、その国の法規に対応した品質や成分でなければダメ。研究、品質保証、生産部門などと調整を重ねて現地用の製品を開発しても、売れるかどうかは市場に出してみないと分かりません。でも、ここまでの時間と手間と関わった人たちの労力を考えたら、絶対にコケるわけにはいきません。プレッシャーはハンパないですが、こうした経験は海外営業だからこそできること。市場調査から代理店の選定、法規に基づく品質保証や生産調整、プロモーションに至るまであらゆることに関わり、仕事の幅がものすごく広がりました。
入社時は、国内営業一本でやっていくつもりでした。支店長に憧れがありましたし、売上No.1を達成したい気持ちが強かったです。そんな自分が海外営業部門に異動を願い出たことは、人生最大の挑戦かもしれません。先輩方が作り上げてきた基盤がある国内営業から脱して、自ら販路を拓くことに挑戦したくなったんです。その想いに会社が応えてくれたのは嬉しかったのですが、いきなり命じられたのが、ミャンマーへの赴任。ミャンマーは、「Earth(Thailand)Co., Ltd.(アースタイランド)」のブランチ的なポジションにあり、新たな代理店を見つけ出して販路を広げるという、重要なミッションを課せられました。ミャンマーには行ったこともありませんし、カントリーリスクが高い国に行くなんて、ちょっと顔が引きつりました。でも、想定以上の大きな挑戦の場を与えられて、心の中で「やってやる!」ってガッツポーズする自分もいて、軽く興奮を覚えたのも事実です。
行ってみると、待っていたのはサバイバルな日々。衛生面でも食事の面でもインフラの面でも、日本とはまるで環境が違います。JETROやJAICAの人が、「ミャンマーに行くなら何よりも必要なのは『生命力』」と語る意味を実感しました。最大のミッションが「生き抜くこと」だったとは、想定外でしたね。営業力は二の次でしたが、任務を思えばそんなことはいっていられません。何より驚愕したのは、アース製薬の製品がミャンマーの人たちに全然知られていないこと(涙)。虫ケア用品に至っては、日本のライバル会社のシェアがトップで、店の棚一面に他社の製品が並ぶ光景を見た時は、「こりゃ、ヤバいぞ」と血の気が引きましたね。国内ではアース製薬がトップシェアなのに、ミャンマーではライバル会社が独占している状態が悔しくて悔しくて、「なんとか製品を入れたい!」という意欲がメラメラと湧いてきました。
とはいえ、日本にいるような支援は得られません。自分から動き出さなければ何も始まらない世界です。戦略を考え、現地で人脈を作り、どこからどう攻めていくか。正解がないただただ真っ暗闇の道を、自分の考える戦略が正しいと信じて進みました。正解がない道ですから迷うばかりですが、そこで止まれば文字通り迷路に入りこんでしまうだけ。へこんでも次の戦略、次の一手と前進するために、しんどいことも「経験」と楽しみました。とにかく少しでも良いと思える方向にアンテナを立てて、毎日頭をフル回転させて手足を動かすことに集中です。おかげさまでメンタルはそうとう鍛えられましたね。そして、ミャンマー現地の人々の明るいメンタリティにも救われました。人懐っこくてあっけらかんとしているんです。仕事が終わると飲める店に飛び込んで、現地の人たちと飲みニケーションしていました。
海外営業と聞いて描くスタイリッシュなイメージとは、かなり違っていますよね? 営業力よりも生命力が大事だなんて、国にもよって異なると思いますが、とてもバイタリティーが求められる環境でした。ある意味アース製薬の特殊部隊的なポジションですよ(笑)。でもこんなチャレンジは、なかなか経験できることじゃないですし、やりがいのある仕事に溢れる部署で仕事ができてよかったと思っています。もちろん、営業ですから数字も大事です。海外でアース製薬の製品が店舗の棚にずらっと並び、お客様が購入してくださる光景を想像しながら日々仕事に励んでいました。
ミャンマーでのビジネス展開は、現地情勢の悪化もあり、軌道に乗せるまではもう少し時間はかかりそうです。でも、仏教国であり日本との親和性が高いこと、ミャンマー内にもまだ競合製品が届いていない地域があることも分かっているので、アース製薬がNo.1シェアになる日を夢見て頑張ります。
夢は、アースの製品を世界中に広めること。感染症に対応するアース製薬の製品が必要とされる場が、世界中にあることを確認しました。人々が暮らすところ隅々にまで、アース製品を行き渡らせなくちゃダメなのです。まずはアース製薬の製品を知ってもらうためにも、1製品でも多く店頭に並べたい。現在は米国やオーストラリアの担当になり、より大きな市場での成功に向けてチャレンジを始めたところです。
海外での裁量権は大きく、やるべき範疇も幅広い。一生ものの得難い人脈も作れます。探求心、好奇心、行動力があるチャレンジャータイプの人にとって、やりがいのある世界が待っています。大変なことも多いですが、その分自分に返ってくるものがとてつもなく大きく、成長することは間違いありません。私が生き証人です!
※記載の所属・業務内容は取材時点の内容となります。
オフは仕事から意識的に離れます。友人や会社の同僚と飲みに行くことも多いです。趣味はサウナで、これがないと生きていけません。ミャンマーでも、一つだけわがままをいわせてもらって、サウナ付きの宿に滞在していました(笑)。
写真は、8時間かけて行った思い出のグエサウンビーチです!