サステナビリティ担当役員メッセージ
サステナビリティのさらなる浸透と進展に向けて
サステナビリティ基本方針の策定から約3年、社内への浸透度合いをどのように評価していますか。
サステナビリティという言葉そのものの認知度はかなり高まっていると思いますし、CSRサステナビリティ推進部では勉強会などを積極的に開催していますので、その本質や意味合いについても少しずつ理解が深まっているのではないかと感じます。ただ、部門によって温度差がありますし、一人ひとりが自分事化するまでには至っていません。まだまだ道半ば、というのが正直なところです。
新しいスタートを切ったCSRサステナビリティ推進委員会について教えてください。
まず経緯から説明しますと、CSRサステナビリティ推進委員会は、CSR報告書を制作するための部門横断型の作業部会として始まりました。さまざまなメンバーが部門の垣根を超えて連携したことで情報収集も含めてスピーディな対応ができており、その点は非常に良かったのですが、意思決定のフローがしっかり定まっておらず、一生懸命取り組んだメンバーの苦労がなかなか報われない一面もありました。
そこで今回、サステナビリティ活動を推進するという本来の役割も踏まえて、組織を大きく見直しました。執行責任のあるメンバーと実務を担うメンバー、いわばトップダウンとボトムアップの両輪という体制で、意思決定フローの見える化を図っています。今後は、いかにリスクと機会を把握して活動に落とし込むのか、いかにグループ全体に展開していくのか、という点に注力しながら取り組んでいきたいと考えています。
マテリアリティ(重要課題)の進捗状況はいかがでしょうか。
2021年に「気候変動への対応」「地球環境問題への配慮」「持続可能な調達の推進」「安心で快適な暮らしに貢献する製品・サービスの提供」「多様な人財の活躍を支える職場の実現」「経営基盤の強化」の6項目をマテリアリティとして策定しました。
2023年、2026年、2030年を短・中・長期の目標年とし、毎年進捗状況を確認しています。現段階ではどの項目にもしっかり対応できており、2023年は概ね目標値を達成しました。これまでは良好に推移してきましたが、この先は外部環境も変わってくると思いますので、KPI(重要業績評価指標)も含めて柔軟に見直しをしていく必要があります。
TNFD*が注目されていますが、生物多様性などについてはどのように考えていますか。
*自然関連財務情報開示タスクフォース
当社は虫ケア用品メーカーであるため、どうしても生き物を駆除する薬剤を製造・販売しているというネガティブなイメージがつきまとう面があります。しかし、「虫ケア」という呼び方や考え方をいち早く提案したように、虫をむやみやたらに殺傷するのではなく、人の居住空間に入ってきた虫を必要最低限の薬剤で防除、忌避することを目指しています。そういう意味では、これまでの企業活動の中でごく自然に生物多様性への意識を高めてきたのですが、サステナビリティが謳われる今の時代のフレームに落とし込んでいく、ということも必要だと感じています。
現在、自然環境の保護、外来生物の対策、昆虫種の保存などの活動をしていますが、さらにサプライチェーン全体で生物多様性の保全とその持続可能な利用に向けて取り組みを広げていきたいと思っています。
※2024年3月、当社の生産拠点である坂越工場が30by30(サーティ・バイ・サーティ)の取り組みの一つである自然共生サイト(環境省認定)に新規登録されました。
株主資本主義からステークホルダー資本主義へ、という流れの中で大切にしていることは何でしょうか。
当社グループにおいてはっきりしているのは、社員とその家族が最優先だということです。その上で、お客様、お取引先様、株主、投資家、地域社会など多様なステークホルダーと相互に信頼を深めていくことを大切にしており、積極的な情報開示やコミュニケーションに努めています。
なお、お取引先様に関連する取り組みとして、今年1月にサステナブル調達ガイドラインを策定し、周知を行いました。今後は人権デューデリジェンスに関する対応やサプライチェーンマネジメントのさらなる強化が課題だと考えています。お取引様は200社ほどあり、当社が牽引していく立場にあるものの、1社だけでは難しいというのが現状です。目的を同じくする業界団体に加盟するなど、持続可能なサプライチェーンの構築に向けて模索をしているところです。
人的資本経営に関心が高まっています。社員への思いや社員に期待することを教えてください。
「全員参画」「コミュニケーション」「人がすべて」の3つを全社員共通の価値観「アースバリュー」と定めているように、当社グループでは常に人財を中心に物事を考え、進めています。心身の健康管理に関する施策や各種研修にも積極的に取り組んでいるので、そういった環境を活かし、当社グループのポリシーやバリューもしっかり理解した上で、自律的なキャリア形成に努めてほしいです。一人ひとりが自分のウェルビーイングを実感し、そして全員が同じ方向に向かって一緒に成長していく、そのどちらもが大切だと思っています。
執行役員 経営戦略本部
CSRサステナビリティ推進部 部長
平松 淳