会社は自分にとって大切な一部だから、会社が褒められると嬉しい
(浅井)
小学校から高校、公民館など、さまざまな場所で出前授業をやっています。将来を考えたときに浮かんだやりたいことが、ずっと自分にとって身近だった「教育」でした。なぜ身近だったかと言うと、父と姉が教師をしており、私自身も大学では途中まで教師を目指していたほどです。身近だったゆえにその厳しさも見ていたことと、ゴキブリに深く興味があったので、結局は教師にならず、アース製薬に入社しました。しかし、入社してからも「教育」についてはいつかやりたいと考えておりました。
私は仕事をする上で「役に立ちたい」「褒められたい」という思いがモチベーションになっています。それだけ聞くと独りよがりで自己中心的だと思われるでしょう。生徒さんたちに「授業が面白かった」と自分自身が褒められることはもちろん嬉しいです。それ以上に会社は自分の一部のようなものだと思っているので、「この商品や技術がすごい」、または会社が「社会にいいことをしている」と褒められるとさらに嬉しくなります。これからも会社と自分が同じ方向を見ることのできるこの活動を続けていけたらと思います。
(研究部 業務推進室 浅井 一秀)
自らの失敗や視点を次世代教育に活かす
(浅井)
私自身、高校時代は理科が苦手でした。当時の自分に教えるような視点で、もっと面白く、分かりやすく伝えることで、理系に苦手意識を持つ子どもを減らしていきたいです。幸いにも当社の商品には科学の要素が詰まっているので、この現象はなぜ起こるのか? と突きつめることを諦めない姿勢を持てるように促せたらいいですね。自分が過去に、勉強に対する苦手意識から選択肢を狭めてしまった後悔があるので、子どもたちに対しては理系も文系も分け隔てなく興味を持って、将来の選択肢を狭めないようにしてほしいなと思っています。
会社では新入社員研修も担当しています。この場では、自分の失敗談をたくさん話しています。失敗を率先して伝えるのが先輩の仕事と考えているので、新入社員のみなさんには同じ失敗をしないようにして、私をどんどん越えていってほしいですね。
虫は大事な「パートナー」であり「仲間」
(浅井)
アース製薬に入社したのはゴキブリに興味があったからですが、なぜゴキブリに興味をもったかというと嫌いだったからです。嫌いなことや苦手なことについて調べたくなる性分があり、ゴキブリも嫌いだったからこそ、もっと知りたいと思ったのです。もともとは「ゴキブリを絶滅させたい」と考えて入社したのですが、アース製薬に入社してゴキブリについて詳しく調べるうちに、その生命力、その裏にある臆病さなど、さまざまなことが分かってきて今では「生物界の大先輩、絶滅させるなんておこがましい」と畏敬の念を抱いています。
(野村)
一方、私は虫が好きな側ですが、虫ケアメーカーでの勤務を通して、虫を嫌う方の気持ちもよく分かるようになりました。虫を嫌いな人は当然いるし、嫌いという気持ちは変えられない。ならば、お互いを排除しようとするのではなく、住み分けるというポジティブな意味でお互いが「避ける」という発想でいられれば、みんなが仲良く共生できるのではないでしょうか。これは最近の商品開発におけるトレンドでもありますし、「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する」という当社の経営理念も同様の考えに基づいていると理解しています。
(浅井)
私も、ゴキブリが苦手であることに変わりはないものの、研究に携わるうちに、自分がいるところにいなければよいと思うようになりました。実は、出前授業でも虫を見せると、子どもたちが嫌がることがあります。「臭い」「気持ち悪い」と言われると、不思議なもので「そんなこと言わないで」と思うんです。自分も虫が苦手だから、子どもたちに共感できるはずなのに、虫に対して愛着が湧いているのを感じます。出前授業で持っていく虫たちは、「害虫」としてではなく、「パートナー」として連れて行っている感覚なんです。虫との仲間意識が芽生えています。
虫を「駆除」するために培われた技術を活かして、絶滅危惧種を救いたい
(野村)
当社は虫ケア用品のメーカーとして、虫の研究をずっと行ってきて、膨大な量の知見があります。その知見や研究の成果を活かして、当社だからこそできる、当社ならではの研究ができるのではないかと昔から思っていました。研究部には、自分のアイデアを自由に提案できる機会があります。そうした場で、SDGsやCSVの文脈も織りこんで、絶滅危惧種を守るための飼育技術の開発を提案しました。そのテーマが認められて『絶滅危惧種コバンムシの代替餌ボウフラを用いたときの生存率および成育期間』と題する取り組みを学会発表することができました。
「蚊(ボウフラ)」を活用した研究ができたので、次はゴキブリの知見を活かして、当社らしい研究発表ができたらいいですね。嫌われ者の虫たちにもいいところがあるし、役に立つこともあるのだと伝えたいです。
(研究部 業務推進室 野村 拓志)
生態系は「多様である」からこそ面白い
(野村)
なぜ私が絶滅危惧種の研究をするのかというと、いま生息する虫たちが私たちの代でいなくならないようにしたいからです。虫たちが生態系のシステムとして重要な役割を果たしてくれるからという側面もあります。ただ、個人的には純粋に、いろいろな虫がいる楽しさを守っていきたいです。
たとえば、アメンボだけしかいない池というのはつまらない。網を入れてみたら、マツモムシがとれたよ、タガメもゲンゴロウもいたよ、という状態がワクワクします。1種類の生物がたくさんいるのではなく、多様な生き物がいるなかで関係性が生まれているのが面白いし、豊かなことではないでしょうか。ある虫は、この植物にしか卵を産まないとか、またある虫はこの植物や虫だけしか食べないとか。生態系は、そういう関係性を基に成り立っています。その多様で複雑な関係性に「なぜだろう?」と想像や思考が膨らんでいくのが面白いですね。
(研究部 業務推進室 岩切 涼)
部署や立場の背景にあるものを学び、関係性をつなぐ
(岩切)
私は、研究や出前授業といったこととは全く異なる仕事をしています。ミッションや目的が異なるそれぞれの部署同士をつないで、双方の要望や意見を「翻訳」して伝える役割を担っています。
たとえば、設備やサステナビリティに関することを、研究部内の担当者と会話を通じて情報収集し、それを相手先に間違いなく伝わるようにしています。設備の仕事なら工事会社と研究員の間に入り、互いに必要な情報はどの点にあるのか考えますし、サステナビリティに関することならば、CSRサステナビリティ推進部と研究員の疑問点がどこにあるのかを考えるようにしています。設備もサステナビリティも、はじめは情報がないところからスタートします。ですから、まずはその部署やそこに関わる人が何をしているのかを学ぶことは重要だと思います。依頼を受けたとき、どうしたらいいか分からないということも正直あるのですが、そうしたときに「言っていることがわからない」で済ませるのではなく、背景にあるものを学んで相手との距離を縮めていくことを心がけています。
分からないことをそのままにすれば、後で自分にはねかえってきますし、そもそも、分からないことを知りたいという欲求もあります。その知りたいという欲求は、研究部の人たちが持っている 「知ろうとする意欲」からの影響が大きいです。
(浅井)
岩切さんは、初めてお会いしたときから「自分の仕事はここまで」と線を引いていない印象でした。とても話しやすかったですね。
(岩切)
研究員の人たちとは、交流を兼ねて飲みに行ったり、フットサルを一緒にしたりしています。その中の会話を通して、立場や等級が違うなか、みんなそれぞれの業務で大変さや難しさがあることが分かってきます。だからこそ、自分たちが不利とか有利とかそういう視点で仕事をするのではなく、相手の立場を理解して一緒にやっていくことを心掛けています。誰かがどこかで汗をかいていることをすくい上げていきたいですね。ここにうまくパイプが通るといいよね、というポジションに入れるように、関係性のなかに自ら入っていくことを意識しています。
企業も社会も循環型へのシフトを目指す
研究部内に対してCSV(Creative Shared Value)を積極的に発信していくなかで、研究員も「社会をより良くするために率先して動かなければならない」との信念に基づき、CSVに取り組んでいます。
最初はサステナビリティに関する知識がなかったために、それが利益になるのかという疑問もあったのですが、課題として認識した上で深く学んでいくと、商品開発とサステナビリティが密接に関わり、社会と企業の双方に価値を生み出すということが理解できました。また、企業としても継続的にサステナビリティを推進しないと、立ち行かなくなると感じています。さらに言うと企業だけでなく、生活者としても行動を起こしていかないと、どんどん地球環境が住みにくくなっていくのではないかと危惧しています。
商品開発に関して言えば、脱プラスチックに取り組んでいかないと、コスト高や石油からの脱却ということでプラスチックが使えなくなったときに商品が作れなくなってしまう恐れがあります。生活面においても、積極的にリサイクルを行っています。仕事においても、生活においても、循環型にシフトしつつあることを感じています。