アース製薬

感染症や害虫に困っている海外のお客様のために、ないものを「ある」にしていく

アース製薬では、東アジア・ASEAN域内を中心に世界でも製品を展開しています。
気候、害虫の種類、住環境状況などが日本国内とは大きく異なる世界の国々では、どんな課題があり、私たちは製品を通じてどのようにその解消に貢献できるのか。
日々模索しながら事業を進めている様子とそこにかける想いを、グローバル海外統括本部 本部長の佐藤憲太郎が紹介します。

感染症や害虫に困っている海外のお客様のために、ないものを「ある」にしていく
人の命を守るために「蚊に刺されない環境をつくる」という使命

(グローバル海外統括本部 本部長 佐藤憲太郎)

人の命を守るために「蚊に刺されない環境をつくる」という使命

 当社の製品は大きく分けると虫ケア用品と生活用品の二つがありますが、現在、海外では虫ケア用品を主軸に展開しています。特に、ASEAN域内における虫の問題で非常に大きな存在が蚊です。実はデング熱やマラリアなど、蚊が媒介になった感染症によって世界中で最も多く人の命を奪っているのです。私たちグローバル海外統括本部は、この感染症を防ぐため、いかにして人々が蚊に刺されない環境を作れるかということに使命感を持って取り組んでいます。

 私はアース製薬に入社して22年になります。国内の営業から始め、首都圏エリアの支店長を経て、初めての異動が海外だったのです。
 東アジア・ASEAN諸国の多くでは日本ほど流通環境の整備がなされていないのが現状ですが、私たちメーカーが機能や用途を明確にして送り出すことによって、お客様が選択できる幅がひろがります。状況にあった適切な製品を正しく選択できる環境が整えば、困っている人々を減らしていくことができる。これが、当社が企業として海外の国々にできる社会貢献であり、提供できる価値だと考えています。

国が違えば、虫も違うし、薬剤の規制も異なる

 日本にいる虫と海外にいる虫が違うのが、グローバルにおける難しさのひとつです。同じ効能の製品を作りたい場合でも、国によって薬剤に関する規制が異なるため、それぞれの基準をクリアするために、薬剤の種類や配合などを変えていかなければいけません。と同時に、そうすることによって効き目が失われてしまっては意味がないので、そのバランスを見極めるのが非常に大変です。
 生活用品は趣味や嗜好で選ばれることが多い一方、虫ケア用品は効果があってこそ選ばれるものです。そのため製品作りの段階から、生活用品とは異なる部分が多いのですが、海外の場合はそこに規制というハードルが課されているのです。その点で国内とは異なる難しさがありますが、それを乗り越えた先に、効果があり、かつ安心・安全な製品を作りたい、困っている人々の助けになりたい、との想いで邁進しています。

国が違えば、虫も違うし、薬剤の規制も異なる

「対応型」ではなく、イノベーションでヒット製品を生み出せるか

 私はよくグローバル研究部門のメンバーに「ヒット商品を生み出すことがミッション」だと言うのですが、これは単純に“売れるモノを作る”という意味ではありません。海外には先述したような課題で困っている方が多くいらっしゃいます。そうした方が当社の製品に出会うことで、これまでお客様ご自身も気づいていなかった潜在的な困りごとに気づき、視野や選択肢がひろがる。これまで市場になかったものが、“ある”になること。そういったイノベーションにつながる製品を生み出そう、ということです。そのために「対応型」の仕事をしないようにとメンバーには常日頃から伝えています。

 革新的なアイデア創出には、考動の中に余白時間が必要です。そうした余白時間をつくりだすためにも役割の重複がないように業務分担をし、足元の仕事だけではなく、未来を見据えた仕事を同時進行させることを徹底しています。
 未来を見据えるという意味では、外に出て、自分の目と足でマーケットを見ることが特に大事です。競合商品の調査など表層的なことだけではなく、お客様が生活をする場、買い物をする場に足を運ばないと見えないものが、現場には必ずあるはずだからです。

「今」と「未来」双方を見据えて、スピード感をもって考動する

 お客様に製品を届けるまでには、薬剤の規制だけでなく他にもクリアしていくべきステップがあります。その一つが、製品の登録です。虫ケア用品のような製品は、販売に際して各国の関係機関への登録が必要になるのですが、この登録にも実は長い時間を要します。半年の場合もあれば3年の場合もあり、国によって期間が異なります。いずれにしても足元のことだけ考えていたのでは、製品がお客様に届くのが何年も先になってしまうこともあり得るのです。

 加えて、商習慣の違いという問題もあります。たとえば商談が成立しなかった場合同じ製品の提案を半年間受けないということもあります。こうした場合、ひとたび機会を逃すと、お客様の元に製品が届くのがさらに遅くなってしまうリスクがあります。こうしたことを見越しながら、数年先に確実に製品を提供することを見据えた長期的な動きと、今すぐに提供できるものをしっかりとお客様に届けることを同時に進め、スピードを落とさないよう心がけています。
 場合によっては「どれほど困っている人がいるのか」「なぜ急ぐ必要があるのか」をアピールしながら関係各所に働きかけ、製品の登録までの期間が短くできるようなロビー活動を行うこともあります。

地域と協働し、選択肢の幅をひろげる

 新しい選択肢を生み出すためには、どの地域の人々が何に困り、どんな製品が必要とされているかを正しく知る必要があります。と同時に、私たちがどんな想いで製品を作り、どんな課題を解消したいと思っているのかをしっかり伝えていくことが必要です。ですから、現地の人たちとのつながりも非常に重視しているのです。

 現地に拠点がない国での展開においては、政府をはじめとする公的機関と連携していく場合が多くなります。感染症の問題に対して、私たちのような民間事業と協働したいと前向きに申し出ていただける場合もありますし、他国の製品で効果が得られずに困り、問い合わせていただけるケースもあります。
 一方、現地法人のある国では地元社員のコネクションを活かし、病院や学校機関、大使館、各自治体など、ひろくつながりを持って共に問題に取り組める関係性を築いていたり、またあるエリアでは感染症対策予算などがなかったりするため各自治体で対策を検討するところから苦戦しているケースもあり、私たちが関わることに対して非常に感謝されます。

 そして実際に商品を販売する小売業者に対して、共にお客様へサンプリングなどのアプローチも積極的に行っており、「蚊に刺されない環境を一緒に作ろう」というスタンスで協働できる関係性を作っています。製品は、目指すゴールやそこにかける想いに賛同を得られてこそ展開できるものです。さまざまな人を巻き込みながら、「一緒にやりませんか?」と呼びかけ、関心を高める、意識を醸成する、そんな姿勢で取り組んでいます。

ストーリーがあるからこそ、「価値」が人に伝わっていく

ストーリーがあるからこそ、「価値」が人に伝わっていく

 もちろん当社は民間企業なので、売上は大事です。ですが、それは結果であるべきだと思っています。なんでも売れればいいという考えだと何を主軸にする企業なのかが曖昧になってしまいますし、そもそも売上に関しては、タイミングや縁や運で偶然、成果が出ることもあるものです。「よきプロセスなくして、よき結果なし」との言葉通り、継続して結果を出し続けるためには、プロセスが重要だと考えています。
 当社がグローバル海外統括本部として実現したいのは、先ほどもお話したように事業を通じてお客様の選択肢をひろげること、そして感染症の被害が減少に向かい、人々が健康で快適な生活を送れることです。その目指すべきゴールに向かってどんなプロセスをたどるべきかが考え尽くされた製品には、課題や信念に基づいたストーリーがあると思っています。ストーリーのある製品は、その魅力や意図が人にしっかり伝わり、それが売上という結果につながるのではないでしょうか。

 たとえば、タイで展開している「OASIS(オアシス)」というブランドを例に挙げますと、発売時にこれといった宣伝をする前にもかかわらず他国からも発注や問い合わせが続き、今も伸長しています。ネーミングやパッケージデザインに至るまで私自身も深く関わったブランドなのですが、ストーリーを持った製品は、それ自体がある意味キャラクターのようなものを持ち、自然と出会う人に魅力を感じてもらえるのだと、改めて感じています。

 私たちはメーカーとして虫ケア用品を開発・展開していますが、虫という存在を介して人々の命や生活と向き合っています。当社で働く社員がお客様とその生活を思い描き、それぞれのストーリーで製品を届けられることが理想です。
 グローバル海外統括本部では研究、現地法人、輸出営業、海外マーケのメンバーひとりひとりが各国に対し活躍しています。このように多様な人がいる場で活躍することで、さらにその各位のストーリーが彩られていくと考えています。多様な課題を持つ国々に向け、メンバーひとりひとりが自分の頭で考え動く出す多様なストーリーから、価値をひろく提供し続けたいと考えています。

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