アース製薬

開発秘話:アースノーマット

~蚊とりのトップメーカーとしての情熱~

お客さまの利便性を第一に考える

〈蚊〉の駆除剤として、1960年代までは「蚊取り線香」が隆盛を極め、その後、1963年に「蚊とりマット」が登場して人気を博していた。

しかし、「蚊取り線香」は、使用の度に火をつけなければならず、燃焼時間も短く、煙によるヤニの問題を抱えていた。「蚊とりマット」も同様に、使用時間は多少長くはなったものの、毎日取り替えなければならず、薬剤が安定して拡散しないために効きめには難があった。

そこで、それらの欠点を克服し、お客さまが手間をかけずに好きなときに好きなだけ使用でき、さらに最後まで安定した効きめを発揮できる全く新しい「蚊とり」を開発しようと、1979年に開発プロジェクトがスタートした。

使用時間は最低1ヵ月

試行錯誤の末にたどりついたのが、薬液をヒーターで温め揮散させる方式だった。
最初にできた試作品の殺虫効果は、長くて数日から1週間程度が限界だった。ここで、どのくらいの持続時間があればいいかとアンケートを実施してみたところ、圧倒的に「最低1ヵ月」の声が多く、かくして「連続使用時間、最低1ヵ月(1日12時間使用×30日=360時間)」という目標が立てられた。

1ヵ月安定して効きめを発揮するという目標のために不可欠なのは、この薬液の入ったボトルに浸る〈吸液芯〉の開発だった。吸液芯には、薬液を適時所定の量を吸い上げることで、安定的に部屋中に揮散し殺虫効果を使い終わりまで維持するという役割があるからだ。
さらなる研究の結果、実験室レベルにおける吸液芯は無事完成し、目標達成が見えたかに思えた。

ところが、工場で量産が始まり品質チェックを行ったところ、思わぬ壁にぶつかった。
量産した〈吸液芯〉の性能にバラつきが生じたのだ。さらに液漏れがするなどの問題も起き、再び研究室にこもる日が続いた。

それまでの商品の研究過程で得られていたデータや、今までの技術を駆使し応用することで、ようやく吸液芯も完成し、プロジェクト開始から5年の歳月を経て、1984年液体電子蚊とり『アースノーマット 30日セット』は商品化された。

ちなみにこのネーミングだが、当初、「蚊に対する効きめが高い」ことで『滅蚊』と予定していたが、「名前が直接的過ぎる」という意見があり、『アースノーマット』となった。

技術力でお客さまのニーズに応える

研究当初は30日だったものが、発売後は、要求が高くなり、お客さまのニーズに応えるべく、1993年には『ロング60日』を発売し、さらには、90日、120日・・・と、使用時間が違うにも関わらず、お客さまの利便性を考え、30日と同じボトルの大きさで、器具もすでに発売済みのものをそのまま使用できる仕様のものを開発した。
また、使用時間だけではなく、〈使用可能空間の拡大〉にも着手した。

2000年には『ワイド』を発売。
こちらも同様に、同じボトル、同じ器具を使用するにもかかわらず、10畳以上の空間に対応できる仕様を開発した。
器具においては、コードが邪魔だという声から、1990年に「コードレス」を発売、1994年には「タイマー付」を発売し、器具の開発にも取り組んだ。

〈使用時間の延長〉と〈使用可能空間の拡大〉は、今叫ばれている省資源の問題にも貢献する結果となった。たとえば、120日であれば30日のボトル4本分が1本で済む計算となるからだ。また、ボトルの素材も従来の塩化ビニールから再生可能なポリエステル樹脂(PET)に切り替えたことにより、環境に配慮した商品となった。
このように、『アースノーマット』は、使い勝手や性能の向上と同時に、環境に配慮する商品として、今なお進化を続けている。

認知度を上げることの苦労

『アースノーマット』がシェア8割を獲得し絶大なる支持を得た裏には、たゆまぬ営業努力があった。実は、1984年の発売当初から売れたわけではなく、3年ほどは、思い通りに売れない時期が続いた。

社員誰もが、「こんなに良い商品なのに、どうして売れないんだろう?」という疑問を抱いていたが、この商品の良さが上手く伝わっていないことがこの苦境の原因なのではないかという結論に至った。
まずは、お客さまへの理解促進が大切だと、営業部員が店頭に立ち、時には、社員、工場の従業員も含め、休みを返上して店頭で商品のメカニズムや便利さを訴えた。
お客さまへ丁寧に説明をすることで解決しようとしたが、次なる課題に直面した。

価格設定だ。納得してレジへ向かったお客さまが、高いからと戻しにくる光景を何度も見た。当時1600円。決して高い設定ではないと思っていたが、他の蚊とり商品に比べると高いといわざるを得なかった。そこで価格を見直すことにした。

さらに、「蚊とりマット30枚が、このボトル1本に」をキャッチフレーズに、「毎日のスイッチオン・オフだけで簡単に使える!」と、機能を明確にわかりやすく説明したテレビCMを流したことが、商品認知度を飛躍的に高め、店頭活動との相乗効果によってシェアは大きく拡大していった。

担当者は当時を振り返り、実際に販売促進で店頭に立った時、売れなかった頃と比較して、お客さまの反応が高まったのを肌で感じ、何ものにも代えがたい喜びを感じたと話す。

世界と共生

発売25周年を迎えた2009年には、液体蚊とりのトップメーカーとして世界に貢献したいと考え、「ストップモスキートプロジェクト」を実施した。

アースノーマットの売り上げの一部(1個につき5円)を、日本赤十字社の活動である、マラリアなどの感染症の予防に関する知識の啓発、移動診療による治療の提供などをはじめとしたケニアの子供たちを救う地域保健強化事業(愛ホップ活動)へ、支援金として1000万円を寄付し、この活動が認められ、日本赤十字社から感謝状が、国からは紺綬褒章を受章した。

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