キケンから守る取り組み
SDGsに関連した取り組み
感染症予防に取り組む背景
世界の32億人がマラリアに、128カ国の39億人、世界人口の約50%がデング熱にかかるリスクがあると発表されています(2018, WHO, UNICEF)。これは、毎分1人の5歳未満の子どもがマラリアで命を失っていることになります。
WHOは2019年、地球規模で注力すべき10の健康危機課題に蚊媒介感染症であるデング熱疾患を掲げました。近年の物流や人々の移動のグローバル化に伴い、熱帯地域の感染症も全世界へのリスク拡大が進んでいます。
また、地球温暖化に伴う虫の生息域の拡大や外来生物の増加により、虫が媒介する感染症のリスクが増大しています。当社は、虫を媒介して罹患する恐れのある感染症の予防に貢献します。
Dengue and severe dengue(外部サイト)
日本国内での取り組み
「殺虫剤」から「虫ケア用品」へ呼称変更

「殺虫剤」と呼ばれている商品は、人口減少が続く中にあっても、地球温暖化の影響や外来生物の増加によって売り上げが増えています。その中で消費者の「薬剤の毒性が高そう」というイメージが強いことも分かりました。実際の製品は極めて安全性が高いため、イメージによる誤解を払拭して、蚊によるデング熱やジカ熱などへの正しい感染症ケアにつなげるための第一歩として、「虫ケア用品」への呼称変更を決めました。
呼称変更に当たっては、商品の安全性が正しく伝わること、商品をイメージしやすく呼びやすいネーミングであること、感染症ケアにとって重要な商品群の一つであると表現できることを重視しました。これによって、「毒性が高そうで使いたくない」と考える消費者にも安心してお使いいただけるよう情報発信するとともに、呼称変更の背景やメリットなどを紹介したビデオを用いて、小売店など関係各所に対する啓発活動を進めています。
虫ケアステーション

マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染者数が2021年には過去最多を記録するなど、全国的に虫媒介感染症への警戒心が強まる中、当社では虫ケア啓発活動として、アウトドアイベントやスポーツ競技の会場内に「虫ケアステーション」を出展しています。「虫ケアステーション」とは、虫媒介感染症のリスクを紹介し、虫よけ剤による予防と効果的な使い方を提案するための当社オリジナルのブースです。当ブースでは、虫よけ剤「サラテクト」を実際に用いながら正しい使い方を伝え、時には害虫や被害症例を展示することで虫ケア啓発を行います。これまで、神奈川県横浜市、熊本県御船町、香川県高松市などの屋外イベントで実施し、参加者への啓発・予防を行いました。いずれも当社としては初めての取り組みで、多くの関心を寄せられた有意義な活動となりました。虫媒介感染症対策の啓発は当社の重要な使命であり、少しでも被害の減少に貢献できるよう、今後さらに「虫ケアステーション」による啓発活動を拡大していきます。
学校での虫ケア出前授業

虫媒介感染症など様々な「キケン」がある虫について、正しい知識と対策を学ぶ事は非常に大切です。そこで当社は、全国の学校で「野外での虫対策」と題した授業を開催しています。授業の中では、「キケン」な虫も生態系の一部を担う生き物である事に触れながら、様々な虫の生態や、「正しい虫よけ剤の塗り方」などを説明。また、当社で飼育する様々な虫の観察なども交えて、虫ケア(虫対策)への気づきや貴重な体験を提供します。このような授業での学びを通して、子ども達の健康を守り、安心・安全な野外活動・日常生活への寄与を目指しています。
虫ケアセミナー

「正しい知識で正しく虫ケア」をしていただくための啓発活動として、「アース虫ケアセミナー2022」を開催しました。今年で3回目となる本セミナーは、「コロナ以外にも注意したい感染症」というテーマで実施しました。講演では、TVでもおなじみの国立環境研究所の五箇公一先生と大阪大学の忽那賢志先生がご登壇。五箇先生は「地球環境変動と新興感染症リスクの拡大」と題し、生物多様性の破壊と感染症リスク拡大の関係、そして生物多様性の保全の重要性をご講演されました。忽那先生は「身近な虫に要注意?蚊やマダニによる感染症とその治療」と題し、世界で一番人間の命を奪っている生物は蚊であり、蚊が媒介する感染症について、また近年増えているマダニが媒介するウィルス感染症について、それら感染症を予防するための虫ケアの重要性をご講演されました。会場、オンライン配信共に多くの方に視聴いただき、虫ケアに対する関心やニーズの高さがうかがえました。今後も学識者との連携により信頼度の高い情報発信を取り入れた虫ケア啓発活動を進めていきます。
海外での取り組み
ASEANでの事業展開
当社がASEANのタイに進出して約40年。当時は平均賃金や衛生意識がまだ低かったことや、国民の90%以上が仏教徒であるため、殺生を嫌うという文化的背景があり、さらに、タイ語で、殺虫剤と農薬が同じ言葉であることから、農薬の誤飲に関する死者が出たというニュースが出るたびに、当社の虫ケア用品に対してネガティブなイメージがつくこともありました。
当社は、約40年間にわたる現地に根付いたマーケティング活動を通して、殺虫剤は農薬とは違って家庭向けに安全に作られているということを、現地にいる300名以上の営業担当者やプロモーション担当者がさまざまな形で啓発し、安心・安全な製品であることを訴え続け、今ではタイにおける殺虫剤シェア11.5%、市場第2位のメーカーになりました。近年、タイのみならず東南アジア諸国ではデング熱に罹患する人々が増加しています。その東南アジアからの輸入感染を含め、日本やアメリカ、フランスなど世界120カ国以上でデング熱の感染が報告されています。
当社とEarth(Thailand)Co., Ltd.は、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」を共通のゴールとしました。SDGsのターゲット3.3の2030年までにマラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶する、に寄与すべく、地元の公衆衛生局や教育省とともに販売および社会貢献活動を通して蚊媒介感染症予防のための正しい知識を広められるよう努めていきます。
ベトナムでのデング熱抑制に向けた取り組み

World Mosquito Program(WMP)は、世界中の人々を蚊媒介性感染症から守るためにオーストラリアのモナッシュ大学の研究者らによって設立された非営利型イニシアティブです。WMPは、ボルバキアという細菌を使用して、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、黄熱病などの蚊媒介性感染症の感染者数を減らす活動を行っています。当社は、WMPによるベトナム(ミンズオン省トゥザウモット市)でのデング熱防圧プログラムを2021年から支援しています。アース製薬とWMPは、同じ目標を共有し、SDGsの達成に向けて協働します。